私が踊るなんて、劇団態変に参加した時は夢にも思わなかった。身体障害者の身体表現だと自覚し始めたものの、「踊る」という意識に至ってなかった。態変が創立後、4、5年で台詞を捨ててしまったので、気がつけば「踊って」る楽しさを感じ、身体と心の解放感の味を知った。けれど、何年か過ぎ、私は大きな考え違いをしていたことに気がつく。イメージする私の動きは健常者のものでしかなかった。私のからだの曲がり具合や動き具合を活かす表現に思い至らなかったのだ。世界のどこでも通用する、わたしのからだでしか表現出来ない「動き・踊り」などと思いはじめると、肩に力が入ったようで初期のあの楽しさが薄れてしまった。
　いつの日にか、私にしか出来ない表現を、気がついたら踊ってるという初期の楽しさを取り戻すことが出来たとき、私は満足するステージを何時でもどこででも演じることができると想い描いている。

福森慶之介 (劇団態変)
>> 37年大阪市生まれ。少年期は在宅障害児。83年劇団態変の旗揚げに参加。ケニア(’92)エジンバラ(’96’97)ベルン(’97)など海外公演も参加、現在に至る。態変以外では、舞踏の栗太郎とコラボレーションをArt Theater dBなどで、また97年より映像作家 小池照男の映像とのコラボレーションも。