白黒のブラウン管の中で「レッツキッス頬寄せて?」と坂本九が唄っている。その唄に引き寄せられる様に父母兄は浮かれ楽しげに踊りだす。それを観た幼児の私は突然物を蹴散らし「ヤメー!」と叫びながらテレビのスイッチを消す。これが私の生まれて初めてのダンスとの出会いである。今思えば繊細でデリケートな私は、ダンスの持つ日常の向こう側に引き摺り込む魔力の様なものに恐れを感じていたのかもしれません。
それからも私とダンスとの戦いは続きました。小学1年生で初めて経験した運動会では、女子上級生の足並みの揃った美しい行進に目と心を奪われ危うく気を失いかけたり、ブルース・リーを見て「アチョー」と叫びながらステップ踏んで足を挫いたり、サタデーナイトフィーバーったり、マイケルジャクったりだリラリー。
早い話がいったい私は何が言いたいのかと申し上げますと、「誰の日常生活の中にもダンスは存在する。特別の人だけの世界じゃないのだよ、おっかさん」と言う事です。是非一度!どなた様にも一生に一度ぐらいはダンス作品なるものを観ていただきたいなー、というのが私の切なる願いであります。
ヤザキタケシ
Yazaki Takeshi
>> 成人して初めてダンス作品を見る。それから10年間は史上最強のダンサーを目指し、テクニックの研鑽に命をかける。それから10年は今まで生きてきた身体の記憶をたどる作業としてテクニックは封印し、日常の中からダンスを拾い上げるダンスを試みる。そして次の10年目は誰でもが出来るものではなく、私にしか出来ない動きを創作することに懸命である(ここ数年、海外での招待公演が多い為、日本では忘れ去られようとしている現状に少々焦っている今日この頃)'89〜90ニューヨーク留学、'98ヨーロッパの振付賞にノミネート、〜'05毎年海外での招待公演を行っている。寅年うお座。
*6月には、DANCE BOX特別企画「GUYS III」振付ディレクター・出演、そして7月には、dB international works 2005でシュロミ・ビトンとの競演が決定している。
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