[Alternative
Media Gathering]
「ユーロ・メーデーから不安定就労の時代を考える」
6/19(日)DVD "precarity" 一挙上映会(全192分
/ 英語字幕付)
フランスで失業者三百万人を超えたのを筆頭に、欧州は90年代に大失業時代を迎えた。かつて自由を肯定的にとらえ「フレックスワーカー(フリーター)」といわれた不安定就労も、その生活基盤の脆弱さが社会問題として認識され、失業者運動を契機として、「プレカリアート(無安定階級)」を合言葉に、大衆的な共同行動へ、社会運動へと発展した。移民たちをはじめ、社会保障もなく解雇された労働者、フリーランス、派遣社員、パート・アルバイト、学生たちに広く連帯を呼びかける。これは求職や賃上げ要求ではなくて、出産保障・病欠・有給休暇・組合結成権といった、基本的な社会権をめぐる闘争なのだ。
DVDマガジン『プレカリティ』(2004)は、文化運動と言うべき多種多様な形態の運動を、ユーロメーデーを軸に取材・制作した映像作品のビデオコンピレーション。社会的な制度設計から取り残され、徹底的に消費者化された若者世代の組織化の装置、また共同行動の新しいモードを探るための道具箱を意図したものだ。制作方法に共有の戦略をとり、世界各地のインディペンデントなビデオ制作者、メディア・アクティビスト、オーサリング技術者、翻訳者、共闘者のセットワークを通じて、機材・資源やスキルを共有することで産まれた。流通においても共有の戦略をとる。使用許諾の形式にクリエイティヴ・コモンズを採用、非営利の利用であれば、著作権者の帰属を明示すること、かつ同一許諾を継承することを条件に、自由に改変・再配布して良い。
内容も、消費主義の現実を突いたリアリティ・ハッキング、カルチャー・ジャミング、ドキュメンタリー的フィクション、広告産業を裏返すメディアスタントなど、映像作品そのものが多彩なメディア実践となっている。とくに、マドリードから届いた女性たちの相互インタビューが興味深い。社会的自己表象の探索過程をたどるような作品だ。ファッションモデルの他、かのサーカス団「シルク・ド・ソレイユ」の労働者の語りもあって、不安定な労働条件、国外退去の恐怖、離婚調停中の養育負担、家賃ぎりぎり給料、様々な困難が語られる。
それでも、たとえばフランスでは日雇いも保険なしの労働契約も違法であり、雇用とみなされない。成人してなお親元に住んでいてもホームレスに数えられるという。ホームレスも、最低限の住宅は保障されており、日本のように即野宿(ラフスリーパー)というわけではない。ということは、フランスの基準ではあなたも既に失業者かつホームレスかも知れない。「わたしたちは住宅のことも自己責任と思いすぎなのよ」という一言が痛烈。まさに、個人的なことは政治的だ。
text:櫻田和也(remo)
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