cocoroom飯島:(第二部では)とても新世界というところと似ているなぁという事例がたくさんあって。あ、そうか、ここはある種歴史の必然というか、ここぴったりなんやなと思って。

司会(remo甲斐):文化にとっては経済というのは欠くことができないんですけれど、経済からみた文化は、どうも余暇、プラスα、趣味というところに陥っていく。本来はなくてもいいいっていうロジックがそこに太くあるわけですね。でもぼくらはそうではないと思っている。文化というのは欠くべからざるものであると思って動いているのが現場だと思っています。

吉本:「文化に経済は必要だけど、経済にとって必ずしも文化は必要ではないかもしれない」というのは、文化と経済が横に並んでいるからそうなるのであって、経済より前に文化は必要なんだと思うんです。
(中略)
最初に、べつに経済に遠慮することなくて、経済より先に、人間が人間としているためにアートが必要なんだろうというくらいのことで考えないと。いつも片隅で小さくなる必要はないなぁと思います。

 

鷲田:都市における文化のレベルって、ネットワークの交点に誰がいるか、どんなかっこいい場所があるか、そこでほとんど決まってくるように思います。

佐々木:最近は(中略)先進国の消費者は価格が安いという理由だけで商品を買いませんね。個性的で職人的な風合いのある商品を買います。経済的価値以外の、文化的価値のあるものがいいと考える消費者がいるということです。
(中略)
文化や芸術の豊かな都市のほうが、品質の高い先端的な商品を生み出す可能性が高い。今までは、道路が広くて交通網が発達している都市がいい、ハード面を整備するべきだ、それが社会のインフラだと考えられてきましたが、これからはそれぞれの都市にある、文化的な創造力が社会のインフラになる。

cocoroom飯島:われわれアートNPOに求められているものってのは、結局のところ経済的な効果なのでしょうか。経済的なところ、お金も大事だと思うし、それ以外のソフトウェアのところでの人のつながり合いというところの仕事をしていると思うんですけれども、それを測る尺度として、やはり経済的な尺度というのは欠かせないものなんでしょうかね。

 

佐々木:NPOが今もてはやされている理由は、パブリック(行政)とプライベート(市場経済)だけでは社会がうまく機能しない段階に入ってしまっているからです。この2つだけでうまくいくならNPOは必要ない。今、行政は財政危機に陥っているし、大企業はどんどん海外へ進出していますね。
(中略)
そこでNPOという、いわゆる民間の組織だけれど公共的な使命をもって活動するという領域に頼らざるをえない。この社会が病んでいて閉塞状態だからなんですね。世界的に見ても、パブリックでもプライベートでもない中間の団体であるNPOが、環境や文化や福祉など、あらゆる分野で活躍している状態です。

鷲田:人材育成の目的、市民をもっともっとひとりひとりパワフルにする、基礎体力をつける、そのいい場、チャンスが、こういうNPOだと思うんですね。
(中略)
そういう意味じゃダンスにしろ演劇にしろ音楽にしろ、今この文化事業、アクションプランでやってるなかで、明らかに、別にアートには関係ないけど、なんとなく面白そうだ、なにか自分でもできること、関わることがあるんじゃないかと、なんかふわーっと通っているうちに、知らないあいだにここにべったりしてるとおもしろいということで、だんだんスタッフの側に入ってく。そのときには会社のしがらみとか地縁とか何もなくて、ひとりの個人として、ふっと自分の場所を見つけて、つくる側に回っている。そういう成長が、ぱっと来た人に対しても起こる。そういう広い意味での人材育成、将来原っぱでリーダーとして一流スタッフとして何かことを起こすことができる、担うことができる人を育てる場として、アートというのは肩肘を張らずに、でも実質のあるすごい場だなって思ってます。だからみんなを誘惑してほしいと(会場笑)。

 

小暮:アクションプランをつくるときに、佐々木さんもおっしゃったように、芸術はもともとアルスだった、「術」であったと。でその術ってのは少数の人が見つけたものですよね。それは魔術であったり、技術であったりいろんなものだったりするんですけど。それを、市場経済ではできないから行政がやるんだと、それは行政である価値ですよね。学術というのは、すぐにお金を生まないけども必要だから市立大学をつくっている。産業的な技術も、すぐにお金になるなら民間企業がします。大阪の企業さんに役立つかもしれないけれども、まだ無理なものは大阪市がやる。だから技術研究所とかありますよね。同じ「術」で、一番古くからあった芸術だけなんでやんないの?と思う。芸術という種を今から育てなきゃ仕方ないでしょう。いつもほってたらやせ細っちゃうわけで。ということでやるというのが一番始めみんなで考えていた論理だったんです。なんで行政がやるかっていうのは、それは市場がやらないから。という、当たり前のことをもう一回当たり前に言いたいなと思いました。

 

【4NPOトーカー】

remo甲斐=甲斐賢治。NPO法人remo / 記録と表現とメディアのための組織 代表理事。芸術文化に関する情報デザインが専門。

cocoroom上田=上田假奈代。NPO法人cocoroom / こえとことばとこころの部屋 代表理事。闘う詩人。

remo雨森=雨森信。NPO法人remo / 記録と表現とメディアのための組織 副代表理事。インディペンデントキュレーター。

dB大谷=大谷燠。NPO法人ダンスボックス 代表理事。プロデューサー、コーディネーター。

BI西川=西川文章。NPO法人ビヨンドイノセンス 副代表理事。ミュージシャン、エンジニア。

cocoroom飯島=飯島秀司。NPO法人cocoroom / こえとことばとこころの部屋 副代表理事。ミュージシャン。

 
 
 

>> 現場では、「アートは社会にとって必要不可欠なもの」として活動しています。SAPにはアーティストの来訪はもちろん、視察の方も切れ間なく来られます。そのことが必要とされている何よりの証なのではないでしょうか?


新世界アーツパークに参画する4つのNPOが結成した「新世界アーツパーク未来計画実行委員会」では、ここに掲載しているシンポジウムの後も、連続してシンポジウムなどを開催しています。その記録は、下記サイトにて公開されています。ぜひご覧くださいませ。

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