甲斐賢治
(NPO法人記録と表現とメディアのための組織 / remo 代表理事)
一昨年前の2003年のとある日、ここフェスティバルゲート・新世界アーツパークの一室で、全国のアート・文化系NPOをネットワークしようという準備会の関西部会が開かれました。その時はまだ漠然と、個々人が持つネットワークを介し集まった関西周辺のいくつかのNPOの代表者や関係者が、全国をむすぶ組織のその必要性は理解しながらも、ぼんやりとしか見えないイメージを元に話し合い、第一回フォーラムの開催へと動きだしたような状況でした。そのように暗中模索ながらも始まった、この時の動きが、第2回の札幌での開催を経て、今回、11月5日・6日の二日間に渡り、群馬県・前橋市において3回目の開催を迎えることとなりました。 今回、現地のホスト役を務める“前橋芸術週間”の小見純一氏を柱とする、大勢の学生ボランティアを含む地元チームの多大な尽力によって、“前橋中心商店街”に点在する旧映画館や旧百貨店などが会場としてリメイクされていました。訪れた人々はそれぞれにフォーラムや分科会、さらにはカフェやダンス・パフォーマンスなどが行われる数カ所の会場をその都度の目的に応じて巡る構成となっています。それが知らず知らずのうちに界隈を歩いてしまうこととなり、人通りは少ないものの少しずつ親しみが湧いてきて、まるで街全体が、静かにやさしく来訪者を迎えてくれているような居心地良さを感じることができる開催地となっていました。
メインプログラムとなるフォーラムは、終始とても和やかかつ率直な意見交換がなされた文化庁長官・河合隼雄氏とNPOの代表者ら数名によるオープニングセッションからスタートし、いくつもの分科会が設定されていて、まちに暮らす視点、都市計画の視点、アーティストの視点、さらにはまちとアーティストのかかわりなど、異なる階層の報告や議論がなされました。さらには、ダンスパフォーマンスのプログラム「踊りに行くぜ!!」では、地元のダンサーを含む数名がそれぞれに異なる商店街の空店舗を活用した演目で、100名を越える人々が街を練り歩きながら鑑賞するという、活気に満ちたものとなっていました。
まだ、始まったばかりのNPOという自主的な市民主導の活動。今回のフォーラムでも議論された「公共」の意味が、行政という役割が規定し進めていくというものから、行政と共に市民も自らさまざまな協働や議論を介し「新しい公共」を形成していくものへと、ゆるやかに移行してきていることが実感できる機会となっていたように思います。
|