職業とは、自分や身内の用事をするのではなく他者に開かれ社会に向かい合う仕事を指します。仕事も作品もワークです。他方、演劇も音楽もプレイするものなので、プレイするワークが芸術作品(アーツワーク)となります。ですから、プレイするアーツワークに携わるアーツマネジメント(芸術と社会をチューニングする仕事、以下「アーツマ」と略す)ってそれは職業なのか、はたまた遊びや趣味なのか。疑問が出てきやすい分野なのだろうとは思います。

でも、もちろんアーツマは職業です。趣味にもなるし身近なパーティを楽しくするのも必要ですが、アーツマを職業にすることでアーツはプロ仕様になります。アーツをプロ化する(社会的使命を持つ)ためにアーツマがあるとさえ言えます。たとえれば、アーツの伴侶であるアーツマがアーツを大人にする、そんな言い方も可能でしょう。

アーツマの居所は大きく分けると三つです。一つ目はアーツ集団のなか。ここではまさしくアーツと添い寝しアーツを育てます。もちろん、劇団では制作さんと呼ばれるアーツマは、優しくも厳しい最初の鑑賞者であり批評家です。つねに社会側の眼差しを忘れるとアーツは出世しません。

二つ目のアーツマは芸術のいれものに居ます。劇場、美術館などで働いています。芸術家と添い寝型アーツマが住みつけば芸術監督制度になりますが、ほとんどは、アーツを招き、社会にプレゼントするのが仕事です。このプレゼンター型のアーツマは、アーツのよき友という役柄でしょう。彼らのプロ度を測る物差しは、地域、福祉、産業など各種社会を熟知しつつ、そこへどんなアーツを選んで提供するのか、いかに組み合わせアレンジするかです。アーツを通じ、芸術のいれものを持つ当該社会をどうよくしていくかが主な課題となります。

三つ目は、アーツと社会とを結ぶことを使命とするサービス組織に生息します(主にNPO)。演劇鑑賞会もその先駆けですし、NPOではないですが市場芸術の映画配給会社や音楽事務所もその仲間です。いわばアーツの結婚相談所とか仲人、ウェディングコーディネータと言えるでしょう。なお、上記三つあるアーツマの役割を全部有するNPOや財団もあります。

いずれにせよ、以上掲げたアーツマの使命を概観されれば、アーツマはプロの術であること、むずかしいがやりがいのある職業=処世術(世に在る処の術)だということがご理解いただけるのではと思います。