観客として劇場へ行くとき、ちょっと華やかな気分になるのは、日常とは少し違う時間を楽しむことができる場所だからだろう。劇場とは、多くの人が訪れ、なにがしかの共通の目的を持ってすごす場。つまり「公共の場」である。
しかし「公共の場」という言葉には別のニュアンスも加わってしまう。「誰もが利用できる場」として造られた多目的ホールの多くは、ジャンルによって特化された機能が必要な場合、その要望に答えられる構造ではなく、利用者をかえって遠ざけており、その結果無目的ホールという言葉がささやかれるようになって、もうずいぶんと経つ。
新世界アーツパークの各スペースは、大阪市が場所を用意し、それらの運営を芸術系NPO(特定非営利活動法人)にゆだねる、「公設置民営」というスタイルを採っている。つまり、いくつかのジャンルのアートの専門家に、「大阪に新しい個性を育ててください」と依頼をし、それぞれが目的と手段を持って展開している。しっかりとした専門的知識と経験を持った人たちがそれらを活かして、社会と時代のニーズに答える。そうすることによって「公共の場」として多くの「利用者」が集う場所になる。
では、「利用する」とは?
コンテンポラリー・ダンスの専門劇場として展開している“Art Theater dB”を例として観察し、劇場の持つ機能を考えてみた。
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