ダンサーとしての利用

作る
>> ダンス(人間)の動きには「寝る」「座る」「立つ」「歩く」「飛ぶ」の5つしかない、と言っても過言ではない。ただ、そのバリエーションが無限にあり、それを訓練によって自在に引き出すことができる「技術者」をダンサーと呼ぶ。また、別の方法論と技術を用いそれらをどう組み合わせるかが振付である。身体には、その人の経験・習慣・民族性・国家性・社会性など、生き方のすべての情報が刻み込まれており、それが個性となって舞台上で発露し、観客にイメージをもたらす。NPOダンスボックスのエグゼクティブ・プロデューサー大谷燠は、身体的技術とイメージ、この二つを合わせて「身体力」と呼び、今後の活動のキーワードにしたいと言う。


出る
>> アーティストの力量に合わせたステップアップシステムをNPOダンスボックスは持っている。第1段階の[CIRCUS]は、音楽でいうなら「対バン形式」。関西圏のみならず香川・広島・東京・岡山などからもダンサーがやってくる、まさに「力試し」の場だ。[CIRCUS]で注目されたら、発表時間も少し長くなる[SELECTION]が待ち受けている。ここには、普段は集団で活動しているダンサーがソロで出演したりと、楽しみ方も幅が拡がる。そして、[INDEPENDENT]。単独公演をNPOダンスボックスが全面的にバックアップする。さて、観客はどれを観ればよいか?[INDEPENDENT]でしっかり作り込まれた世界を堪能するのもよし、[CIRCUS]で次代を担うダンサーの先物買いもよし。その間を取って、[SELECTION]で油の乗ったアラカルトを楽しむもよし。このシステムは、観客にとってもステップアップシステムではないだろうか?

[DANCE CIRCUS]
1組12分×5組が出演する、公募プログラム。
年4回開催。
   
  [DANCE BOX SELECTION]
1組20分×3組が出演するセレクト・プログラム。
年2回開催。
   
  [DANCE BOX INDEPENDENT]
単独公演。年に10回開催。

 

 

つながる
>> ダンスボックスでの公演には他のアーティストをはじめ、批評家やプロデューサーをよく見かける。もちろんここにはダンスボックスのプロデューサーも含まれる。また、ダンスボックスは外からの仕事に対して、アーティストを推薦することも最近増えてきた。そして公演のビデオや写真の記録もすべて保存しているのでプレゼンテーション資料としても使ってもらえる。つまり、ここで公演を打つ事によって自然と次につながる可能性のあるシステムが出来上がっているとも言える。その先は海外での公演かもしれないし、ワークショップの講師の依頼かもしれない、もしくは他のアーティストに誘われ共に作品を作り出すことだってあるだろう。なにはともあれ、公演を打つしかない。自分はこうだ、ということを舞台で表明することによって「次」はおのずと見えてくる。

 

   

 

 

いまさらながら言うと、劇場は「出演者」だけのものではない。コンテンポラリー・ダンスを頻繁に観るという「観客」もその他のアートに比べ決して多くはない。NPOダンスボックスは、そのジャンルの持つ特性を社会へ還元することを、視野に入れて活動している。そしてArt Theater dBという劇場は、そういったアートの本来持つべきパワー / 技術を醸成していく場所である。劇場を「利用する」ということは、劇場の中に入ることだけではない。むしろ、そこでの体験を持ち帰った後におこる化学反応こそが、その「利用」の価値である。

 

編集:SAP-B編集部
取材協力:塚原悠也(dBスタッフ)